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らぶあど encore!
第24章 長い夜
(――あの個性的なメンバーを率いている時点ですでにただ者ではないな……)
綾波は、彼の耳障りの良い、しかし何処か不安定で、人の心の何処かに不安を覚えさせる不思議な声を瞼を閉じて聞き入る。
新たなダイヤモンドの原石を見つけるべく多くのアマチュアミュージシャンを見てきた綾波だが、他のミュージシャン達とは違う光る何かを彼に感じていた。
だが、一見した所――かなり我の強い男に見える。
ミュージシャンはアクの強い人間が多いし、そのくらいの強烈なキャラのほうが世間には認知されやすいが、度を過ぎた我の強さはいつかは身を滅ぼす元になる。
実力や華やかさは勿論重要だが、自分のエゴを抑えてコントロール出来ない人間はこの世界では長生きは出来ない。
(その辺は……実際に関わってみないと見定めるのは難しいか……)
綾波が瞼を開いたとき、どうやら最後の演奏が終わったらしく、観客達の絶叫が耳に突き刺さって来て、彼は思わず指で耳栓をした。
「さて……と、取り敢えずご挨拶するか」
ライヴハウスの熱狂のさなか、綾波は猫の様に静かにバックステージへと向かった。