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らぶあど encore!
第24章 長い夜




所々塗装の剥げかけたスタッフルームのドアを開けて飛び込んできた景色に綾波は絶句した。

上半身裸で頭からタオルを被った姿のボーカルが女性の肩を抱き寄せ、額をくっ付けて居るのだ。

女性は困った様に笑って彼を見上げているが、嫌がった様子はない。

端から見れば、二人は今から口づけを交わすのではないか――と思える程の親密な距離感だった。

綾波は背筋が一瞬凍り付くが、それは直ぐに焼けつく程の熱さに変わり、彼の瞳の底には赤い火柱が宿る。

ドアノブを握っていた指先には力が込められ、きっと他の何かを握らせたら、その物体はグシャリと潰れただろう――それ程の怪力で彼は握り締め、形の良い唇はわななく。

いつもの彼なら、通りすがりの男女のこんな場面を見かけただけでこんな風に動揺しない。

だが、ボーカルの男に触れられている女性が彼の良く知る女性だったから、話は別だった。

そう、彼女はほなみだった――


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