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らぶあど encore!
第25章 長い夜②
祐樹と同じ顔なのに何故そう思うのか、史にも分からなかったが、彼は祐樹にはない鋭く冷たいオーラを纏っている様な気がしたのだ。
しかし、祐樹本人がここに来るわけがないのに一瞬でもそう思ってびくついた自分が愚かに思えて、小さく笑いを溢す。
――祐樹が俺の事を知るわけはない。
デビューしてからというもの連絡ひとつ寄越さないのに――いや、それは史が祐樹達に『金輪際お前らと関わるのは御免だ』とキレたからなのだが――
あの過去の日の屈辱感を未だに忘れる事が出来ないままの史だったが、他人にそれを悟られるのを何より嫌った。
『悔しさをバネに頑張る』などと、口が割けても言いたくない。
悔しい、という気持ちを引きずったままで音楽を続けている事を誰にも知られたくなかった。
何よりも、クレッシェンドのメンバー、特に祐樹には。
史は自分の音楽に絶対的な自信を持っている。大勢に支持されるような取っ付きのよい種類の音だとは思っていない。だが、『誰にも好かれる音』などと言うものは端から存在しないし、あったとしてもそんな物はくそくらえだ、と思っている。
――俺は俺の音で、勝負してやる――
そう決めている。