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らぶあど encore!
第25章 長い夜②
「……さて」
ほなみを乗せた車が走り去り、綾波は深く長い息を吐いて肩を軽く回し、上着のポケットからスマホを出し、志村へのメールを打ち始めた。
『――例のバンドを見てきました。
売れる要素はあると思いますし、ボーカルには確かに只者ではない華がありました。
ですが、俺には彼は手に余ります。
彼らをどうにかしたいなら、志村さん自らがプロデュースするか、北森さんに』
夜風に吹かれながら、そこまで文字を打ち指が止まる。
北森景子。
岸コーポレーションの会長の岸和也の眼鏡にかなって、自分に代わりクレッシェンドのマネージャーになった女。
彼女の頑張りも働きも、メンバーも綾波も評価しているし、感謝しているが……
今夜の事はどうにも不可解だ。
責任感の強い彼女が何故、ほなみを放り出し、置き去りにしたのか。
綾波は足を止め、歩道の脇のベンチに腰掛け、こめかみを押さえた。