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らぶあど encore!
第25章 長い夜②
岸会長の知り合いの娘という事で信用し疑わない智也や志村に密かに危機感を抱き、綾波は独断で密かに彼女の身元を調べようかと思っていたのだ。
何がどう、という事はないのだが、景子と話している時、噛み合わない事がしばしばあるのだ。
綾波も今は自分がスカウトした歌姫の美名の事で忙しく、あまり景子のサポートを出来ていないのだが、彼女に岸会長の話を振ると、いつも瞳を落ち着き無く瞬きさせ、自信のないしゃべり方になる。
彼女が困惑しているのが傍目から見て一目瞭然なのだ。
いつもの彼女は、会話する時にも人の目を真っ直ぐに見つめてくるし、言葉尻も歯切れがよく、曖昧な言い方はしない。
だが、ただひとつ、岸会長と父親の繋がりの話題になると、答えはするのだが、綾波には彼女が予め決められた台本通りに話している様に見えてしまう。
一度そういう風に疑いを持つと、そのフィルターは簡単には外れない。
万が一、という事もある。用心に越したことはない、そんなに気になるならば調査させればいいのだ。
マネージャーを辞めた今でも、クレッシェンドは綾波にとって大切なバンドであることには変わらない。
弟と、その妻にとってもかけがえのないバンドなのだ。