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らぶあど encore!
第26章 長い夜③
『好き』
その言葉を発した途端、景子の胸が強烈に音を立てて早鐘を打ち始めた。
飛び出すのではないか、と思う程に大きく動く心臓は、景子に恋の自覚をさせるには充分な働きをしている。
景子は、亮介への好意が日に日に大きくなっていくのを感じていたが、史との間で揺れ動き、自分で自分の心が掴めないところもあった。
だが今日、目の前で亮介が自分を助けて車にはねられた瞬間に、彼を失ってしまう、と強い恐怖と悲しみに襲われた。
そして、彼が目覚めた時のこれ以上ない安堵と喜び――
こんな気持ちになるのは、洋平が産まれた日以来だった。
――私は、亮介君が好き……
いつの間にか……史よりも……貴方を一番大事に思うようになっていたの……
いつも優しく見詰めるその瞳も……時々見せるミュージシャンとしての鋭さも……
そして、貴方が持つほんの少しの弱さも……
全部に惹かれている――
好き、という言葉があまりにも自然に口をついて出てきた事に景子自身驚いていたが、亮介の驚きようはそれ以上だった。
長い睫毛のくっきりとした二重の大きな瞳をこれでもかという風に大きく見開いて、景子を穴の空く程に凝視していたが、頬が、首が、そして耳までが真っ赤に染まっていき、ゆでダコみたいになった時、彼は何を思ったか景子を抱き締めていた左手を離し、ベッドの脇のナースコールを押したのだ。
「……っ?」
景子が咎めるように見るが、亮介は今度は左手で自分の頬を思いきりつねった。