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らぶあど encore!
第27章 長い夜④
祐樹の澄んだ切れ長の瞳が煌めいて、ほなみを真っ直ぐに捉えている。拘束されているわけでもないのに、ほなみは蜘蛛の糸でがんじがらめになった蝶の様になっていた。動けない。本心は、彼に近付きたい。その瞳が間近になる距離まで――息が触れあうまで――
媚薬を体内に仕込まれて麻痺してしまったかのように指先ひとつ自由にならない。祐樹の姿を見詰めるだけで精一杯だった。
祐樹もまた、思いがけず目の前に現れたほなみに見惚れていた。
ほなみの安静を第一に、暫く離れる事を決めてどの位経ったろうか。毎日どんなに多忙であろうと、ほなみの事を一瞬たりとも忘れる事はない。
ピアノに指を落としてメロデイーを奏でれば、ほなみのアルトの歌声が耳元で聴こえてくるし、スタジオで良いテイクが録れた時には、小さな手を叩いて「スゴいね、西くん」と溢れる笑顔で言うほなみの姿が浮かんくる――
(――つまり……俺はやっぱりほなみにベタ惚れなんだよな――)
祐樹は、急激に込み上げる恋しさに、今すぐ別居宣言を取り消したい気持ちになる。