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らぶあど encore!
第27章 長い夜④
祐樹の唇の端が上がり、その少しの表情の変化は、彼を妖しく尚魅力的に見せて、ほなみをクラクラさせる。
ほなみ自身も色々と分からないことだらけで、祐樹に詰問されたとしても適当な答えが見つからないような気がするが、祐樹はとにかく愛する女が思いがけずにやって来たことが嬉しくて仕方がないらしく、ほなみがここへ来た経緯はどうでも良さそうに見えた。
屈託なくコロコロと笑い、ほなみに聞く。
「降ろしてもいいの?」
「だ……だって」
「ほなみ、フラフラじゃんか。危なくて見てらんないよ」
「う……」
確かに、ほなみは今日一日の疲労で身体が言うことを利かないのを感じていた。
妊娠してから、疲れやすくなった自覚はある。
大事にし過ぎるのも運動不足になってしまうから、適度な散歩程度が良いと思って心がけてはいるが、今日は少し頑張りすぎた。
それに、身重でライヴハウスは軽率だったのだろうか――
史の誘いを断りきれず、ほなみも興味があったから行ってしまったが、結果、景子は史の言葉に深く傷ついた様子だったし、綾波にも迷惑をかけてしまった。
(……私がきっぱり断れば、こんな事になっていなかったかも知れない)