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らぶあど encore!
第29章 貴方の側に居たい
電光石火の様な短いキスは、景子の胸を極限まで高鳴らせた。
亮介は唇だけ離し、額を合わせたままで景子に甘い眼差しを向ける。左の腕で景子を抱き締めながら指は彼女のうなじの後れ毛を弄ぶ。
景子の身体の力はすっかり抜けてしまい、亮介の胸の中へしなだれかかる格好になっていた。
入院して三日目。景子は時間の許す限り亮介の側に居た。いや、正しくは綾波に命じられて通っているのだが、景子自身彼の事が気になって仕方がないし、世話を焼きたい気持ちがあっての事だ。
クレッシェンドのマネージャー業は今は一旦保留状態になっている。事故の当日、厳しく景子を叱責した彼だったが、翌日の態度はうって変わって優しいものだった。
『亮介に付いていてくれてありがとうな……もし、北森さんが良ければ……だが、亮介が良くなるまで側に居てやってくれないだろうか。
バンドの対応やスケジュールは岸さんや志村さんと相談してみるから……亮介の事を頼む』
柔和な笑顔さえ浮かべ、言ったのだ。
亮介は景子と一緒に居られる事を無邪気に喜んでいたが、景子は綾波の一見優しげな言葉の裏にあるなにかを感じ取っていた。
(――綾波さんは、私を訝しんでる……)