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らぶあど encore!
第29章 貴方の側に居たい
亮介の家族――両親は店を経営しているので、見舞いに来るのが難しいので景子に電話でしきりに感謝してすまながっていた。
彼の両親と電話で話すのは勿論初めてだったが、声の調子や息遣いから人柄が滲み出るのが分かった。
向こうで何度も頭を下げているのではないだろうか、と思うくらいに腰が低くてお人好しなのではないか、という印象で、景子は思い出すと可笑しくなる――が、自分の実家の事が頭を過り、暗い気持ちにもなった。
物心ついた頃から、景子は母親の不機嫌な顔しか見たことがない。景子が何をしても苦虫を噛み潰したような顔で無言で睨み付ける。
父は母の言いなりで、景子の事には関心がない様子だった。
(洋平が生まれてしばらくは、洋平がクッションになってごく普通の家族のようになったかと思ったのに……
私は史との恋に狂って……)
亮介の両親の声を思い出すと、彼の家庭の朗らかさが垣間見えて、胸が苦しくなった。