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らぶあど encore!
第30章 密約
綾波は電話を切り、景子を抱き寄せたままで宙を見詰めていた。
景子は、まだ危機が完全に去っていない事に恐怖が甦るが、必死に今の状況から脱する方法を考える。
綾波は景子の身元を調べていると言った。
経歴が嘘だったと知れた以上、誤魔化しようがないが、景子の実家の情報と洋平の事が知れたからといってそれが何だというのだろうか。
景子は、史の事を誰にも話していない。両親にも、洋平にも会わせた事がない。
自分の事情を打ち明けた友人もいない。
つまり、史の事さえ露見しなければ、景子がそれ以上に糾弾される筋合いはない筈だ。
図々しい考えで無理があるかも知れないが――いまのところ、バンドメンバーやほなみは景子に同情的だ。
それを楯になんとか乗り切れるかも知れない――