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らぶあど encore!
第32章 言葉に出来ない
同じ頃何も知らないあぐりとカナは一階の売店で飲み物やデザートを物色していた。
この病院の売店には独自のベーカリーがあり、焼きたてのクロワッサンが人気であっという間に売り切れるのだが今日はたまたまタイミングよく買うことが出来て二人はご機嫌だった。
「うれし~!パン大好き~」
カナはクロワッサンの沢山入った紙袋を持って時折薫るバターに頬をほころばせた。
「ほなみがよく焼いてくれたんだけどね……クロワッサンて手間がかかるしさ、最近は食べさせてもらってないのよ~良かった~ここのが買えて」
同じく無邪気に喜ぶあぐりにカナは思い出したように指を鳴らして言う。
「そうだ!折角ですし飲み物は売店じゃなくてムーンバックスのにしましょう!ちょっと歩けばお店あるじゃないですか」
「ああ、そうね!皆好きだし!行こ~」
あのムーンバックスはこの間景子とも行ったな、とあぐりは思い出しながらカナと共に売店を出るが、救急車のサイレンが聞こえ、二人は足を止めた。