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らぶあど encore!
第32章 言葉に出来ない
自動ドアの向こうに吸い込まれていった景子の後を追えず、あぐりは無意識に差し出していた右の手を握り締める。
何故追えなかったのか。追い掛けて、彼女の手を取って、大丈夫だよと言ってやれれば良かったのか。
そうしよう、そうしたいと思っていた筈なのに、動けなかった。
大きな疑念が景子に対して沸き上がってしまったからだ。
――あの男は誰よ?あれは絶対に友達とかじゃない……私には分かる。私はそういう事に関しては勘が良いんだから……
今日は息子と会える日だからって、代わりに病院へ行って欲しいって私達を頼ってくれたのが本当に嬉しかった。
やっと友達って思ってくれたのかなって……でも……
「……どうしましょう……あれ……神田さんに言うべきですかね?」
カナが不安げに呟き、あぐりは唇を噛み締め低く言った。
「亮介君がこんな時に……他の男と会ってたって事?」