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らぶあど encore!
第32章 言葉に出来ない
「洋平……洋平……どうしよう……っ」
「景子っ……」
洋平を乗せた担架が処置室の扉の向こうへと消えたと同時に景子はその場に崩れ、史が肩を支えた。
青ざめて震える景子になんと言葉をかけようかと考えあぐねていると、年配の看護師が扉の向こうからやって来て、平坦な口調で話しかけてくる。
「北森洋平君の、お母様ですね?」
「……は……はい」
ビクリと身体を震わせ、弾かれた様に顔を上げた景子は小さな声で返事をする。
看護師はクリップボードに留められたA4サイズの用紙とボールペンを差し出して事務的に言った。
「今、先生が診察していますが……この用紙に洋平君の生育歴や、このような症状がいつからどんな風にあったかなどを記入して下さい」
景子は声を出さずに涙を溜めた瞳で看護師を見上げ何度か頷くとペンを持ち渡された予診表に向かうが、指が震えて落としてしまう。