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らぶあど encore!
第32章 言葉に出来ない


――大丈夫か、等という言葉を史の口から聞くようになるなど思っていなかった。

 史自身もそんな自分の変化に驚いているように見えた。



(史が変わったのは、ほなみに会ったからなのよね……私が史を変える事は出来なかったけど、これは良いことなのよね……そう思っていいのよね)



 景子は、不安な今の状況に少しでもプラスの要素を見出だそうとするように自分に言い聞かせながら、実家の番号をスマホをスライドしながら探す。

 そうやって無理矢理でも、ほんの少しだったとしても、気持ちを上げて行かなければ、母と話す勇気が持てない。

 指の震えが収まらないまま番号を押し、呼び出し音を聞きながら十秒程待つと、訝しげな声で母が出た。



『……はい?』

「も……しもし……私です……」



 景子は涙が溢れそうになった。

 どんなに素っ気ない風情だろうと、実の母の声を耳にして何処か安心している自分は、やはりどうあっても母を嫌いになれないという事なのだろうか?
  
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