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らぶあど encore!
第33章 言葉に出来ない②


 史はわざと軽薄な笑みを浮かべ、景子の肩を抱いた。

 景子は驚きに一瞬震えるが、肩をギュッと掴む史の掌から彼が言わんとする事が伝わって来たような気がして、自分の中の動揺を収めようと密かに深呼吸した。



(――俺に任せろ)



 史にこう言われたような気がしたのだ。



「北森さんは、俺を気に入ってくれてるんですよ……ね?」



 女性を落とす時に使う魅惑的な眼差しを景子に向けてから、史は綾波の方を真っ直ぐ見詰める。

 綾波は両の手を組んで音を鳴らしながら首を傾げて口の端を上げた。



「ほう?」

「ミュージシャンとしての素材の俺を、ですけど」



 史がウインクして見せると、景子は大きく頷き、額に密かに汗を滲ませながら言った。



「そうなんです……彼は、私がクレッシェンドの臨時メンバーに推薦しようと思っている人です」
 


 
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