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らぶあど encore!
第33章 言葉に出来ない②



「景子……っしっかりしろ」

「洋平……っ洋平……っ……やだ……っ」



 景子の脳裏に洋平が産まれた日から今日までの出来事が映写機で映し出される様に頭の中に過った。

 真夜中に陣痛が始まりベッドの上で必死に耐えていたあの長い時間。

 あの日は大きな雷が鳴っていて、最初はそれが怖かったが、痛みが強まるにつれてそんな事に構っていられなくなった。

 シーツを握り締めて痛みを逃すように息を吐いて、少し治まり安堵するが、また直ぐに痛みの波が襲って来る。

 どれ程の時間そうしていただろう。気が遠くなる程に繰り返し――看護師に言われるがままにいきんで洋平を産み落とした。

 大きな泣き声が聴こえた瞬間全ての痛みも疲労も魔法の様に消え去って、大きな喜びに取って変わった―― 



「元気な男の子ですよ~お母さん、痛いって一言も言わずに頑張りましたね!凄いです!」



 看護師は、赤子を布にくるみ景子の腕の中へ差し出し言ったが、その言葉が胸に温かく迫った――



 
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