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新月
第7章 大切なこと
『こんなところにいたんだ。
捜したよ?』
暗闇にいたので、目が光に慣れていない。
しかも、涙が次々と溢れ出してくるので、目の前の透吾が見えない。
『一人で泣いてちゃ、だめだよ。
なんで、僕のところにこないの。』
拗ねた口調でそういい、手をチヨに差し出す。
『……だって……』
チヨは、消えそうな声で、透吾の差し出した手を見つめているが、手は自分の胸の前で硬くこぶしを握っていた。
『だって、
何………?』
透吾は少しイライラしながら、目線をチヨに合わせる為、
しゃがみ、膝をついた。
差し出した手は、引っ込めない。
『おいで、チヨ』
チヨは、首を横に振り、動かない——。
『…だって、とうごさまは……
お忙しいから………。』