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ノベルラブ
第8章 蒼井君のターン
半年ほど前から、カフェの二号店を出すというのでオーナーは店を空けがちになった。
最近では二号店をレストランにするかもしれない、というのでますます店に顔を出さなくなっていた。
スミレさんがため息をついているのを見る回数が増えた。


なんかオーナーとスミレさん別れたっぽくない?とまた噂話が蔓延した。
別れたのなら俺は嬉しいけれど、あんなふうにスミレさんが元気がないのは嫌だった。

店の五周年イベントで忙しい、というのにかこつけて俺はバイトの回数を増やし、スミレさんに構いまくった。話しかけて笑わせ、大変そうな仕事を進んで手伝い、オーナーのことはなるべく口にしないように、スタッフの噂話もスミレさんの耳に入らないよう気を配った。

そうすると周りに「お前スミレさん狙ってんの~?」とかからかわれたりしたけど気にしなかった。
事実だし、でもそのためにスミレさんに構ってるわけじゃないし、スミレさんを守るナイトみたいな気分だった。


…で、エッチまでしてしまったわけだけど、俺は今もんもんとしている。
だってスミレさんの小説に渋谷氏がいたから。
あの人にされたことを思い出して、あれを書いたんだろうか?
このベッドで?
あんなふうにスミレさんは喘いで、イッて…。

ブンブンッと首を振る。くそ。

追い出したい。スミレさんの中から。
別れていてもいなくても、スミレさんの中から全部、渋谷氏を取り除きたい。

今しかないと思った。
俺の隣で無防備に眠るこの人を俺のものにするのは、今しかない。

俺は眠るスミレさんを後ろから抱きしめた。
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