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外れない首輪
第3章 御主人様の瞳
「あなたが…井上さん?よろしく、広瀬です。」
思ったより低い声にもゾクゾクする。
スーツを着こなしたその人は、にっこり微笑みながら手を差し出してきた。
手が触れた瞬間、電気が走るようにビクッとしてしまった。思わず手を引っ込めた私に
「静電気、走っちゃったかな?ごめんね、結構帯電体質なんだ」
と、ニコニコしながら話している。
その後広瀬さんは、私と長沼先輩とこれからの打ち合わせを始めた。
挨拶回り先、そのタイムテーブル、交通手段…
広瀬さんの横に座り、書類を見ながら横顔を盗み見る。

…どくん…
口の中がカラカラになる…
…どくん…
胸がドキドキして身体が心臓になってしまったみたい…
…どくん…
心なしか胸が苦しくて、息もツラい…
…どくん…
もしかして、これが一目惚れっていうのかな…


気付いたら、打ち合わせは終わって広瀬さんは帰っていた。
先輩に「いい人そうで良かったわね」と肩をポンポンと叩かれて、やっと我に返った。
「先輩~~、私~…」
と顔を紅潮させたまま涙声で訴える。
「上手くやっていけそうな人で安心したわ。先に言っておくけど、あなたは秘書で、彼は部長で既婚者。深入りしちゃダメよ?今はそんな事ない…って思うかもしれない。でも、私は今までそうやって壊れてきた仲間をたくさん見てる。絵理、あなたにはそうなって欲しくないの。」
先輩の言葉に、あいまいに頷く。この時 私は先輩の言葉の意味をこれっぽっちもわかっていなかったんだ…

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