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外れない首輪
第9章 until First NIGHT
自分の性向を自覚したものの、卒業と同時に高校時代の彼女とも自然消滅して、大学生活を送っていた僕が知り合ったのが今の妻だった。
大人しくて、みんなより一歩下がって静かに微笑んでいる。そんな子だった。
辱めてみたい。強烈に思った。誰にも優しい広瀬君。という仮面を外さず、少しづつ近づいて行って、彼女と付き合うことができた。
付き合って半年、クリスマスの夜に初めての夜を迎えた。けど、僕も彼女も初めてだったから、試行錯誤しているうちにあっという間に朝を迎えてしまった。それでも、彼女の恥じらいながら行為におよぶ姿は、僕をかなり興奮させた。
自分の性向が所謂ノーマルという訳ではないのはよくわかっていたから、少しづつ彼女に刷り込んでいこうとその時は考えていた。僕も経験がほとんどないっていうのもあるけど。
ちょっとずつ責めの趣向を入れていったある日、タオルで彼女の腕を縛ったら泣かれてしまい、あのおとなしい彼女にしては珍しく、キッパリと拒絶の言葉を口にした。
この時点で他の子に乗り換えても良かったのかもしれない。でも、彼女の親には交際を知られていたし、クリスマスの夜の責任を取るような意味合いで、卒業後の彼女との結婚と、彼女の父親が常務を務める会社に就職がほとんど決まっていた。
僕はもう、敷かれたレールを走っていくしかなかった。
こうして就職してから約10年、実質的な入り婿とはいえ、品の良い妻と可愛い子供、都内に一戸建ての家を持ち、将来的には重役の椅子もほぼ決まっている、こういうのを人は順風満帆って言うんだろう。確かにそうかもしれない。だけど得体のしれない空虚さが常に僕の心の片隅にあった。
そんな時に出会った。僕の新しい飼い犬、井上絵理に。
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