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【短編集】real
第1章 拓人
秋も近づいた頃、夏希から二人で会いたい、と唐突にメールがきた。
『弘樹にはいわないで。』
なぜ?と返信しようとして、僕はその単語を消した。
つい少し離れた席で友達とはしゃぐ弘樹を見る。
長袖のシャツを肘までたくしあげ、机に座りながら。
何も知らないまま、またどうでもいい話に大げさに笑っている。
突然、なぜだかわからないけれど。
僕は誰よりも信頼して、誰よりも身近にいた弘樹を、みっともないと思ってしまったのだ。
僕の前では夏希の話ばかりで。
でもその大半はグチだったり、どうしていいかわからないといった弱音ばかりなのに。
他の友人の前ではそんな素振りを見せない。
それどころか、大人の女はなどとほざいている。
大人の女。
確かに僕たち高校生からしたら20歳は大人だ。
でも、僕たちが同じ20歳になったら?
30歳になったら?
大人っていうのは、年齢なんかじゃない。
たまたま僕たちよりも少し先に生まれてきただけだろう?
それだけで大人の女とまとめてしまうの?
あんなにも夏希が眩しいのは、大人だからじゃない。
夏希だからだ。
夏希でなかったら、僕は目を細めたりなんか、しない。
そう思った瞬間。
どこか体の奥がざわざわとする。
何に?
なぜか、きゅっと体の一部が縮こまる。
これが、感情というもの?
僕は、弘樹に生まれて初めて嫉妬したと気がついたのは、その数日後だった。
『弘樹にはいわないで。』
なぜ?と返信しようとして、僕はその単語を消した。
つい少し離れた席で友達とはしゃぐ弘樹を見る。
長袖のシャツを肘までたくしあげ、机に座りながら。
何も知らないまま、またどうでもいい話に大げさに笑っている。
突然、なぜだかわからないけれど。
僕は誰よりも信頼して、誰よりも身近にいた弘樹を、みっともないと思ってしまったのだ。
僕の前では夏希の話ばかりで。
でもその大半はグチだったり、どうしていいかわからないといった弱音ばかりなのに。
他の友人の前ではそんな素振りを見せない。
それどころか、大人の女はなどとほざいている。
大人の女。
確かに僕たち高校生からしたら20歳は大人だ。
でも、僕たちが同じ20歳になったら?
30歳になったら?
大人っていうのは、年齢なんかじゃない。
たまたま僕たちよりも少し先に生まれてきただけだろう?
それだけで大人の女とまとめてしまうの?
あんなにも夏希が眩しいのは、大人だからじゃない。
夏希だからだ。
夏希でなかったら、僕は目を細めたりなんか、しない。
そう思った瞬間。
どこか体の奥がざわざわとする。
何に?
なぜか、きゅっと体の一部が縮こまる。
これが、感情というもの?
僕は、弘樹に生まれて初めて嫉妬したと気がついたのは、その数日後だった。