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【短編集】real
第1章 拓人
なぜか僕は、弘樹がバイトで空けられないとわかっている日を指定して、夏希と会った。
いつも夏希の隣には弘樹がいて、だから二人で並んで歩くことがあるなんて思わなくて。

あまり近づいてはいけないんじゃないか。
でも、距離をあけすぎたら、不自然で、僕が意識していると思われるのではないか。

そんなことを思っていたとき、ようやく気がついた。



ああ、これが。



僕はぽかんと立ちすくんでしまった。
僕の顔だけでない。
体の全てが、初めて自発的に動いたのだ。

僕の動揺よりも先に、夏希は突然歩みをとめた僕を振り返った。


「なにー?疲れたのー?」


彼女は数歩先で僕に笑顔を見せる。

やっぱり、その光は眩しすぎて、僕は観念して目を閉じた。
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