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やらし恥ずかし夏休みバイト
第5章 マジシャンの助手
「こんな遠出を強(し)いてしまい、大変申し訳ない」
窓側に座っている朱里のすぐ左隣に座る紳士が、朱里の方を向いて言った。
朱里は水色のワンピースという普段着だったが、この紳士は真っ黒なスーツを着ている。
紳士の名前は、ムッシュ・ポロリ。
むろん、本名ではなく芸名で、本名は中村というらしい。
この紳士こそ、艶魔術社の代表取締役社長であり、首席マジシャンでもある人物だ。
その芸名からは外国人やハーフを連想されるが、生粋の日本人で、ちょびヒゲと長いもみあげが自他共に認めるトレードマークだという。
年齢は35歳という話だったが、その容貌はどう見ても40歳は優に越えているようにみえる。
このポロリ自身が、二人いた面接官の片割れをじきじきに務めていたそうで、ポロリの一存で朱里の採用が決まったということだった。
「いえ、お仕事ですから、何ら支障はございません。ですが、やはり色々と伺っておきたいことが……」
「結構です。何でも聞いてくださいね」
親切そうな様子をみせ、ポロリが言った。
「まず……。やはり私としても、業務内容をもっと詳しく教えていただかないと、不安で仕方ありません。現地で十分覚えられる内容とは伺っておりますが、正直なところ、さほど記憶力には自信がなくて……」
「これは失敬。あまりに簡単な内容なので、台本を渡すことすら忘れておりましたな。こちらが台本ですぞ」
そう言って、ポロリは見るからに薄っぺらい小冊子を朱里に手渡す。
朱里が視線を落とすと、表紙には「艶魔術の奥義書 持ち出し厳禁」とある。
奥義書という割には安っぽく、どう見てもコピーした数枚の紙をホッチキスでとめただけの代物だ。
窓側に座っている朱里のすぐ左隣に座る紳士が、朱里の方を向いて言った。
朱里は水色のワンピースという普段着だったが、この紳士は真っ黒なスーツを着ている。
紳士の名前は、ムッシュ・ポロリ。
むろん、本名ではなく芸名で、本名は中村というらしい。
この紳士こそ、艶魔術社の代表取締役社長であり、首席マジシャンでもある人物だ。
その芸名からは外国人やハーフを連想されるが、生粋の日本人で、ちょびヒゲと長いもみあげが自他共に認めるトレードマークだという。
年齢は35歳という話だったが、その容貌はどう見ても40歳は優に越えているようにみえる。
このポロリ自身が、二人いた面接官の片割れをじきじきに務めていたそうで、ポロリの一存で朱里の採用が決まったということだった。
「いえ、お仕事ですから、何ら支障はございません。ですが、やはり色々と伺っておきたいことが……」
「結構です。何でも聞いてくださいね」
親切そうな様子をみせ、ポロリが言った。
「まず……。やはり私としても、業務内容をもっと詳しく教えていただかないと、不安で仕方ありません。現地で十分覚えられる内容とは伺っておりますが、正直なところ、さほど記憶力には自信がなくて……」
「これは失敬。あまりに簡単な内容なので、台本を渡すことすら忘れておりましたな。こちらが台本ですぞ」
そう言って、ポロリは見るからに薄っぺらい小冊子を朱里に手渡す。
朱里が視線を落とすと、表紙には「艶魔術の奥義書 持ち出し厳禁」とある。
奥義書という割には安っぽく、どう見てもコピーした数枚の紙をホッチキスでとめただけの代物だ。