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やらし恥ずかし夏休みバイト
第5章 マジシャンの助手
「そもそも、豊色魔術って何なんですか? ホーショクってところが分からなくて」
「マドモアゼル。豊色ではなく艶です。それで一文字でして、音読みで『えん』と読みますぞ。我々の社名にもなっておりますゆえ、ぜひとも早急に覚えていただきたいですな」
 今さらこういう失礼にも思える質問をされたにも関わらず、ポロリには少しも気を悪くしている様子は見受けられない。
 ちなみに老婆心ながら、「マドモアゼル」とはフランス語で「独身の女性を指す敬称の単数形」で、この場合は「お嬢さん」という感じで呼びかけている。
 そして、「ムッシュ」もまた、フランス語において「男性への敬称」として使用される語であり、どうやらポロリはかなりフランス好きなようだ。
 事実、彼はフランスへ留学し、マジック修行に明け暮れていた時期があって、フランス語はペラペラらしい。
 また、これから向かうサバニボシ共和国の公用語であるサバニボシ語も、日常会話は問題なくこなせるレベルだという。
 英語も流暢に話す彼は、語学に長(た)けているようだった。
「こ、これは失礼いたしました……」
「お気になさらず、マドモアゼル朱里」
 鷹揚(おうよう)に答えるポロリが、さらに言葉を続けた。
「ちなみに、艶という漢字は、訓読みで『艶(なまめ)かしい』『艶(あで)やか』『艶(つや)』などとも読みますな」
「ああ、だから、『セクシーマジックショーinサバニボシ共和国』に出演するんですね。セクシーマジックを披露するために! 『なまめかしい』つまり『セクシー』ってことですし!」
「その通り! いやはや、マドモアゼル朱里は実に物分りが良い!」
 おだてられて、朱里は良い気分になり、笑顔を見せる。
 しかし、ハッと気づいたことがあった。
 セクシーマジック……なまめかしい魔術、艶魔術……。
 嫌~な予感がして、恐る恐る尋ねる朱里。


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