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やらし恥ずかし夏休みバイト
第5章 マジシャンの助手
 そして体育館にて、いよいよ練習が開始。
 ポロリは本番さながらの黒いスーツだが、「普段着のままでいい」と言われた朱里はそのままだ。
「最初の数分は、私のオーソドックスなトランプマジックですが、これに失敗することはまずあり得ないので、今はさらっと披露する程度にとどめます」
 そう言うと、朱里にトランプをきらせ、その中から1枚選ばせるポロリ。
 そして、そのカードをスタッフたちにも見せたあと、カードの山に再び戻すことを指示した。
 その間、ポロリ自身は、後ろを向いたままで。
 朱里の合図で振り向くと、ポロリはトランプの山を片手で持った。
 そして、カードを自分の真上に投げ上げるポロリ。
 カードはバラバラになって、ポロリの身体に向けて雪のように降り注ぐ。
 全てのカードが床に落ちたかと思いきや、ポロリはたった1枚だけ、宙を舞うカードを掴んでいたようだ。
 そのカードを朱里やスタッフに見せるポロリ。
 それこそまさしく、朱里が事前に選んでいたカードだった。
「ええええ?! すっご~~い!!」
 感嘆の声をあげる朱里。
 ポロリは得意げに、ちょびヒゲを人差し指でこすった。
「ポロリさん、すごいマジシャンじゃないですか! 台本で大体どんなマジックをこれからやるのかを知りましたが……正直、これが一番すごいですよ! もう、こういうのばっかりでいいじゃないですか。イロモノに走っちゃ、もったいないですよ!」
「セクシーマジックショーや艶魔術を、笑顔で全否定しないでください! こういうマジックだけなら、我々が出る必要はないのですよ。セクシーマジックこそ、我が命。私のレーゾンデートルですね」
「レーズン・タートル?」
「誰が干しブドウと亀なんですか! レーゾンデートル、つまり存在意義や存在理由ということですよ」
 誇らしげに胸を張るポロリ。
 朱里は、「そんなに威張れることなのかなぁ」と内心思いつつも、調子を合わせて愛想笑いをした。


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