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やらし恥ずかし夏休みバイト
第5章 マジシャンの助手
 ともかく、マジックは続けなければならないので、朱里は全裸になるという想定外な事態に見舞われながらも、笑顔で試着室風大道具の中へ。
 ポロリが優雅な身のこなしでカーテンを閉めると、次の瞬間には、朱里は裏から飛び降りて、小階段の後ろへと身を隠した。
 そして、全裸でかがみながら、小階段とともに舞台袖へと消える朱里。
 段取りどおり、休む間もなく、朱里は裏口から屋外へと飛び出した。
 夕暮れの気配立ち込める屋外へ。

 会場の外へ出たことで、朱里は初めて自覚した。
 自分が裸だということに。
 靴だけは履いてはいたものの、肝心の場所を少しも隠していないので、朱里の羞恥はきわめて高かった。
 だが、文句は言えない。
 本来、この時点ではまだ服を着ている予定だったのに、自らの失敗が現状を招いたのだから。
 夏とはいえ夕方になって気温が下がり、やや涼しい風が吹く屋外を、全裸で駆け抜ける朱里。
 会場周辺には人の姿はまばらだったが、皆いっせいに朱里を見た。
 若くて美しい女が、全裸で軽くバストを揺らしつつ、全力疾走しているのだから当然かもしれない。
 中には、咄嗟(とっさ)にスマホを構える人や、大胆にも追いかけてくる人までいて、朱里は心底恥ずかしかった。
 しかし、身体を隠そうとして時間をロスしている場合ではない。
 ステージ上のポロリが合図を送る瞬間には、少なくとも正面入り口ドアまではたどり着いていなくてはならないのだから。
 うつむきながら、朱里は思いっきり地面を蹴って走り続けた。


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