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やらし恥ずかし夏休みバイト
第6章 夏祭りの屋台
 既に周辺には屋台が立ち並んでいるが、全てまだ開店前の準備段階だ。
 たこやき、やきそば、りんご飴、わたあめ、チョコバナナ……食べ物の名前が書かれた屋台を見て、お腹がすいてくる朱里。
 仕事が終わったら思いっきり食べよう、と朱里は心に決めた。
 もっとも、そんな時刻になれば、これらの屋台も店じまいしているので、りんご飴やわたあめは食べられないだろうが。
 屋台が立ち並ぶ中、朱里は勤務先の「お楽しみ輪投げ」の屋台を探す。
 そのとき―――。

「お~い、こっちやでぇ~!」
 10メートルほど先にある緑色の暖簾(のれん)を垂らした屋台から、呼ぶ声が聞こえたので、そちらへ駆け寄る朱里。
 声の主は、この「お楽しみ輪投げ」の店主である佐々岡だった。
 佐々岡は、スポーツ刈りの頭が特徴的な、50歳代くらいにみえる男性だ。
 面接時に朱里が聞いたところによると、佐々岡は京都出身で大阪育ちらしく、京都弁と大阪弁の混ざった関西弁を喋るようだった。
「本日はよろしくお願いいたしますね」
 朱里はそう言って頭を下げる。
「おう、かしこまらんでもええって。よろしゅう頼むで、朱里ちゃん」
 気楽にしろ、と言わんばかりの緊張感のない笑顔で言う佐々岡。
「開店まで、まだしばらく間があるさかい、簡単な説明だけ、しとこか? 説明言うても、大して難しいことはないねんけどな」
「あ、はい! よろしくお願いします!」
「ほんなら、こっち来てや」
 佐々岡は屋台の奥へと朱里を案内した。


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