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やらし恥ずかし夏休みバイト
第6章 夏祭りの屋台
「お客さんに5つの輪っかを投げてもらうねん。ほんで、表に出してあるでっかいボードあるやん。『あのボードについてる7つの棒に、何個の輪っかを引っ掛けられるか』っていう遊びやねん、うちの店がやるのはな」
「なるほど……」
「同じ棒に2つ引っ掛けても、2個目のはカウントせぇへん仕組みや。ほんでな、引っ掛けた個数によって、この表に書かれてる景品をプレゼントするわけやな。しかし、同じ棒に幾ら引っ掛けても『1個』としかカウントされへんし、もし5つとも同じ棒に引っ掛けたとしても残念賞オツカレサンっちゅうこっちゃな。シンプルやろ?」
 ホワイトボードを指し示して言う佐々岡。
 朱里は黙って、説明の続きを待つ。
 まだ、自分に与えられた仕事が何なのか、さっぱり見えてこないので。
「ほんで、景品のことやけども。お菓子って書いてあるんが、『お菓子の詰め合わせ』のことでな。そっちに置いてるダンボールの中に、ぎょうさん(たくさん)入ってるわ。4つの小さいお菓子が1袋に入ってるんや。ほんで、こっからが朱里ちゃんの仕事に関わってくるところや。A賞、B賞、C賞、残念賞ってあるやろ。ここは、お客さんが『18歳以上の大人』か『18歳未満のこども』か、どっちなのかで変わってくる。パッと見、どっちか分からんのに、『大人』って言いはるお客さんには、身分証明書を見せてもらうことにしてるねん。ここ、何よりも大事!」
 ニカッ笑って人差し指を立てる佐々岡。
 佐々岡の口の中、タバコのヤニで薄汚れた歯の間に、たった1つだけある銀歯がキラリときらめくのが、朱里の注意を引いた。
 そして、同時に、とてつもなく嫌な予感がしてくる朱里。
 かなり「18歳以上」という境界線を強調している佐々岡の言葉を受けて、惨憺(さんたん)たる思い出とも言うべき、これまでのバイトでの出来事が、まるで走馬灯のごとく朱里の脳裏に浮かび上がる。
 黙り込む朱里の様子を全く気にしていないらしく、佐々岡は平然と説明を続けた。


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