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やらし恥ずかし夏休みバイト
第6章 夏祭りの屋台
「そっかぁ~。せっかく、こうして屋台を設営したし、朱里ちゃんのために浴衣まで誂(あつら)えたのに、今日は営業できなくなったんやな……。俺の今年の夏は、これで終わりや……。この近辺の夏祭りで、屋台を出してきてんけど、今日は今夏最後の出店やねん。それが、戦う前から終わっちまうなんてな……」
 うなだれて、両手で顔を覆う佐々岡。
 しかし、その指の隙間から、チラッチラッと朱里の様子をうかがっているので、決して本気で悲しんでいるわけではないと分かる。
 ただ、朱里はそれに全く気づかず、佐々岡が心底落胆していると思い込んだ。
 徐々に心を動かされる朱里。
「朱里ちゃん、やる気ないねんろ……しょうがないわなぁ……はぁ。ああ、せっかく来てくれてんし、この時間の分は、しっかりお給料として支払うしな。今も一応、勤務時間に入ってるさかい」
「ええっ?! でも……まだ働いてないですし」
「そやけど、拘束してるわけやから。そこら、きっちりしとかんと、こっちが嫌や。それとな、その浴衣、気に入ってくれたんなら、持っていってええし。朱里ちゃんのためだけに、サイズ合わせて誂えたんやし、返品されてもこっちも困るしな」
「あ、あの……すごく可愛くて気に入りました! でも……働きもせずに、これも貰っちゃうなんて……」
 今度は朱里がうつむく。
「そやから言うてるように、もしそれを返してもろたところで、他の子にあげれへんやん。サイズ違うしな。あと、『汚れたときの予備に』って思って、こっちに同じサイズの浴衣をもう1着、用意しててな。ちょっと待ってや」
 シンボルむき出しのまま、テントから上半身だけ出し、やや大きめのダンボールを持ってくる佐々岡。
 佐々岡に促されて、朱里は中を覗く。
 そこには、淡いピンクの浴衣が入っていた。
 帯は濃いピンクで、これもまた朱里の好きな色合いだ。


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