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やらし恥ずかし夏休みバイト
第6章 夏祭りの屋台
「もう~! いちいち、恋人のふりはやめてくださいよぉ」
「しっ。西山さんに聞こえるやん」
「そんなことばっかり言って……。大体、このお店のコンセプト自体、間違ってます! キスしたり、いやらしいことをしたり、そんなことが輪投げとどう関係しているんですかぁ?! 全く何の関係もないでしょっ!」
 朱里がもっともな異議を唱える。
 だが、佐々岡は少しも動じることなく、真顔で答えた。
「関係ありまくってるやん! なんか、暗示的やろ? 立ってる棒に、輪っかがスッポリとハマるねんで。ぐふ……ぐふふ」
「ちょっ! その発言自体、セクハラですし、意味が分かりませんが……。そのいやらしい笑い方もやめてください!」
「ええやん、ええやん。目くじら立てんと。ほんで、輪投げが成功した暁には、性交を……」
 ムッシュ・ポロリを思い出す朱里。
 溜め息をついて、ツッコミを入れた。
「いえ、全然上手く言えてませんからっ! 寒いです! しかも、似たようなことを、つい先日、別の方がおっしゃってましたし……」
「おお、同志がいはるんか! 是非お会いしてみたいなぁ」
 嬉しそうにはしゃぐ佐々岡。
 朱里は心底あきれ果てていたが、仕方なく仕事のことを佐々岡に思い出させることにした。
「佐々岡さん、時間ないんでしょ? もう4時半を回ってますよ」
「なんやて~?! はよ言うてくれんとあかんやん!」
「逆ギレやめてくださいよぉ! 佐々岡さんが散々セクハラしてるからでしょっ!」
「うぐぐ……言い返せん……。まぁ、細かいこたぁ気にせんと! さっさと準備に戻るでぇ!」
 佐々岡と朱里は、連れ立ってテントを出て、店の準備へと戻った。
 朱里は、「先にお手洗いへ行っておかなければ」と思っていたはずなのに、こうしたやり取りに気を取られて、すっかり忘れてしまっているようだ。
 黙々と、佐々岡の手伝いを続けていった。


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