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やらし恥ずかし夏休みバイト
第6章 夏祭りの屋台
 それからしばらくは、二人の客がB賞にありつき、朱里にキスを強要したこと以外、特に何事もなく時間が過ぎた。
 何より嫌なA賞がまだ1回しか出てないだけまだマシ、などと思っていた朱里は、どうにか耐えぬいていく。
 しかし、7時40分ごろになって、朱里はもじもじし始めた。
 朱里の額には、大粒の脂汗が光っている。
 さっきまでは、ここまで汗だくではなかったので、明らかに身体に何かの異常をきたしているのは明白だった。
 当の朱里には、その原因がはっきり分かっていたが、言い出せない。
 それもそのはず、尿意を催していたからだ。
 もじもじと脚を動かして耐えているが、その苦痛はハンパなものではなかった。
「ん? どないしたんや、朱里ちゃん。えらい顔色悪いがな。あ、気分悪いんやったら、後ろのテントで休んどいてや。もしかして、トイレ行きたくなってるんなら、そこにダンボールの簡易トイレあるさかいな」
「ううっ……」
 正直に言おうか迷う朱里。
 だが、朱里は嘘をつくのが苦手だったので、佐々岡を騙してこっそりお手洗いを済ませるような考えは、頭に浮かびすらしなかった。
 意を決して、佐々岡に尿意を伝える朱里。
「その……お手洗いへ行きたくなってしまって……」
「ん? おしっこか?」
「はい……」
 顔を真っ赤にしてうつむく朱里。
 佐々岡の顔は、パアッと明るくなった。
「なんや~。そない暗い顔せんと! ほな、簡易トイレでしてくれればええやん」
 そう言って、おもちゃの笛のようなものを突然吹き鳴らす佐々岡。
 すると、店の周りに詰め掛けていた客たちのうち、一部の人たちの目の色が変わった。
 この客たちこそ、残念賞を獲得し、店のそばでひたすらそのときを待っていた人々なのだ。
「はい、残念賞を取って、整理券を持ってる人~。20人まで、こっちに来てくださいよ~」
 店のすぐ後ろを指差して、佐々岡が叫ぶ。
 20人の男性客たちは、ぞろぞろとテント前に集結した。


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