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やらし恥ずかし夏休みバイト
第8章 朱里と優輝
 優輝が顔だけ朱里の方へ向けて言う。
「お~! 似合ってる! かわいい!」
「あ、ありがとう……」
 少し照れる朱里だったが、すかさずツッコミを入れた。
「でも、優輝君はどうしてこんな服、持ってるの?」
「そりゃ、彼女が出来たときに、着てもらうために決まってるでしょ。ああ、僕が自分で着る趣味があるのかなって思った? 残念ながら、そういう趣味はないんだ」
 朱里は内心、「別に残念でも何でもないんだけど」と思っていたが、口には出さない。
 黙って、ベッドのそばまで近寄ると、尋ねた。
「そっか……。で、これから、どうするの?」
「僕がバイク事故で足を骨折して入院中、っていう設定でね」
 説明を始める優輝だったが、ちょっと嫌な顔をして言う朱里。
「バイク事故とか、本当にありそうで、生々しいからやめてよ……。優輝君、しょっちゅうバイクに乗ってるんでしょ?」
「朱里は優しいなぁ。僕は安全運転だから大丈夫だってば。でも気になるのなら、そうだな……。そこにあるタンスの角に、足の小指をぶつけて骨折したって設定で!」
「そ、それはそれで、あり得ない気が……。入院するほどの怪我なのかな」
「もう~! 朱里は真面目すぎ! あくまでも設定だから、何でもいいんだってば!」
 笑いながら言う優輝。
「とにかく、そういう設定で! んで、病院のベッドにこうして横たわってる僕のもとに、白衣の天使、朱里が登場! ってわけ。で、朱里が僕に色々な治療をしてくれるってことで!」
 優輝の求めるプレイの詳細が把握できてきた朱里が、そこで尋ねた。
「優輝君にお薬を塗ってあげたり、怪我の様子を聞いてあげたり、するの?」
「そう! そんな感じ!」
 優輝は実に嬉しそうで、勢い込んで言葉を続ける。
「どんどんアドリブも入れていってよ! あり得ない状況でも何でもいいから。楽しめれば、それでオッケーだし!」
「分かった! やってみる!」
 朱里も乗り気になってきた。
 とにかく乗せられやすく、雰囲気に呑まれやすい人である。
「じゃあ、開始!」
 優輝が元気よく言うと、二人の小芝居が開始された。


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