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あたしに全部見せなさいっ!
第9章 二人の気持ち
無我夢中で走ったけど、田んぼを突っ切ったところで限界だった。息が苦しい、を通り越して、心臓が痛い。全力疾走のしすぎで吐きそう……。
そりゃそうなるわ! 学校からほぼ走ってたし。
しゃがみこんでぜえぜえしているあたしに、柚留が心配そうに声をかけてくる。
「まりねちゃん、大丈夫? ちょっと休む?」
なんてのほほんと響く声だっ。襲われた当事者のくせにっ!
「何……、言って……のっ! 追っ手が……、追っ手がきちゃうっ」
どうにか立ち上がり、また柚留の手をしっかり握って走り出そうと構えるあたし。すでに汗だくだ。
「あとちょっとで、家……っ」
「その前にまりねちゃん死んじゃうってば……」
柚留は後ろを振り向いた。
「それに多分、さっきの人追ってはこないと思うよー」
あたしも振り向く。確かに、いないけど……。
あまりに呑気な柚留の言い草に、なんかだんだんむかついてきた。