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あたしに全部見せなさいっ!
第9章 二人の気持ち

「……んじゃーそろそろ、俺らはおいとましますか」
「そーねー、帰ろっか」
西木くんと詩織は、家の方角が全然違う。
じゃあねーと軽い挨拶を交わし、西木くんが自転車の向きを変えようとした時。
「あ、ちょっと待って」
ふいに詩織が荷台から下り、あたしの腕を掴んで柚留から距離を取らせた。
「……ちょっと一個だけ」
「何?」
首をかしげるあたしに、一言。
「あのさ、前に、まりねの描く男には、生々しさやリアリティーが足りないって言ったでしょ?」
「……う、うん」
それらの単語にギクリとする。最近男を研究どころか、ほとんど絵を描いてない。柚留のことでいろいろあったし、悩みすぎて……。
そこが後ろめたいのもあって、なんとなく詩織に怒られるのではと思ってしまってびくびくと身構える。
だけど詩織の言う『一個』は、あたしを責めるような内容ではなかった。

