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あい、見えます。
第1章 見つめ合って
佐々木は、学生時代にバーで働いていた。
ホールの仕事は割が良いし、社会勉強にもなるだろうと思って、何となく始めたアルバイトだった。が、何の因果か、先輩であるバーテンダーが続けざまに辞めていき、ところてん式にバーテンダーのポジションを任せられ、「酒を運ぶ側」から「酒を作る側」に移動させられた。バイトを始めて1年半だったから、出世というなら余りに早い出世だ。時給も少し上がったし、カウンターの中で先輩に教わりながら酒を作るのは、そこそこ楽しかった。

とはいえ、そのままバーテンダーの道に進むことは考えていなかった。
他の学生と同じように就職活動もして、そこそこ大きな会社の内定も貰い、一度はサラリーマンとして働いた。
会社勤めでは、世に言う、大恋愛も経験した。
自分の部署とはほぼ接点の無い、総務部にいた後輩だった。

(彼女も黒髪だったな……)

手の中のグラスを回しながら、琥珀色の液体を眺めると、懐かしい茶色の瞳を思い出す。

肩までの黒髪を揺らしながら、いつも快活に笑う女性だった。
動物が好きで、デートで動物園に行った時は、とても嬉しそうにはしゃいでいた。
初めての夜に、「こわい」としがみついてきた姿が扇情的で、胸が騒いだ。

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