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あい、見えます。
第2章 見守って
明るく開放的でありながら、利用者は皆、騒ぎもせず、自分の気になる本を手に、近くのソファに腰掛けて読書を楽しんだり、CDを聞きながらうたた寝をしたりと、落ち着ける空間でもある。

自宅から歩いて10分程度に、こんな場所があるとは佐々木も知らなかった。

自然と口元を緩める視線の先で、黒髪の彼女が、ゆっくり受付に近寄っていく。

借りていた本でも返すのだろう。

佐々木は近くの棚に置かれていた『今月の映画鑑賞会』のチラシを手にしながら、彼女が戻ってくるのを待つことにした。



だが。



「―――おはよう、ハルカ」

「おはよう」

「いつもの席でいい?」

「うん」



静けさの中、穏やかに交わされた受付の女性との会話が耳に入り、思わず佐々木が視線を彼女に向ける。

黒縁眼鏡でポニーテールの女性が、受付カウンターに置かれた小さな箱から木札を取り出し、彼女の手に握らせていた。

ポンポンと彼女の二の腕を叩く様子は、ただの受付スタッフと利用者という様子では無い。



(いつもの席?)



木札を受け取った彼女は、そのまま1階の奥に足を進めていく。

佐々木はチラシを棚に戻すと、思わず彼女の背中を追って受付の前を通り過ぎた。

1階奥にある個別の勉強机、その4席あるうちの1つに、彼女は腰掛けようとしている。



勉強をする、のか―――。



しかし、どうやって。

この図書館は点字本が多いということだろうか。

いや、それとも彼女は近くの文字は読める、ということだろうか。



腕を組んだ佐々木が、近くのコの字型のソファの一角に腰掛けようとした時、その腕に何かが触れた。




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