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あい、見えます。
第2章 見守って
付き合いは長いが、女性関係の話を深く話し込んだことは無かったため、流石の国崎も滅多に見せない驚きの表情を浮かべていた。

だが、一番驚いたのは口にしていた佐々木だ。

無意識に尋ねたとはいえ、同僚のプライベートに踏み入るような問いかけをしてしまったことに、思わず視線を逸らす。

「何でも無い。悪かった、忘れてくれ」

「や、別に構わないけど」

苦笑した国崎は、固く絞った布巾を畳みながら、チラリと佐々木の横顔を確認する。

「シンさんが、そんな話するなんて珍しいな。……恋でも、しましたか?」

大きな掌でカウンターの上を拭いていた男は、動作の延長上で掌を佐々木の前まで伸ばすと、茶目っ気を孕んだ瞳で、質問の主を覗き込んだ。

打ち返されて戻ってきた質問のボールに、今度は佐々木が面食らう。

恋……?

自分の人生に、暫く縁の無かった単語に、思わず黙り込めば、眼前の国崎の表情が緩く穏やかなものに変わっていた。

「あー、ごめん。むしろ、俺の質問の方が、よっぽど失礼だった。すいません、俺こそ、忘れてください」

「いや、そんなことないよ」

「また。そんなことあるって。シンさん、人がいいからって、あんま俺を甘やかしちゃダメだっつの」

笑い混じりに返す国崎だが、どんなにフランクに接していても、根底では、年上である佐々木の立場を敬うことを忘れない。

その相変わらずの気配りに、佐々木も和やかに微笑むと、小さく頷く。

「分かった。お前が失礼な質問をしてきたら、遠慮無く忘れておく」

「……、っふ、はははは。それじゃ、俺も遠慮なく喋れる」

「だろ?」

無人のバーに国崎の笑い声が響くと、釣られるように奥の控室のドアが開き、若い男が顔を出した。
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