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あい、見えます。
第2章 見守って
「国崎さん、今日、金曜なんすから、笑ってないで早く引き継ぎしちゃってくださいよー」
欠伸混じりにフロアにやってきた青年は、手近な丸テーブルに腰を降ろすと、鞄を枕代わりにして両手で抱え込み、突っ伏して目を閉じる。
「あぁ、悪い」
その様子に笑いを収めた国崎は、シンクの下に吊るしてある管理表を取ると、佐々木に明日の仕事の引き継ぎを行い始めた。
明日は国崎がシフト休みのため、店は佐々木が取り仕切る。
小声で幾つかの指示を出してから、互いに業務の気になる点を確認し終えると、ふと国崎は佐々木の耳元に唇を寄せてきた。
「シンさん、今度久しぶりに飲もうよ」
佐々木が『Dance』に来て間もない頃は、年が近いこともあって、国崎とは良く酒を飲んだ。
店や仕事の話ばかりで、色めいたことは無かったが、どんなBARにしていきたいか、どんなバーテンダーとして働いていきたいか、何の酒が好きか、そんな話を取り留めもなく紡いでは酒の肴にしていた。
そういえば、最近、すっかり、そんな付き合いはしていない。
長く共に働くことで、ある程度の信頼は築けているし、互いの立場も変化したせいか、そんな時間は作れないと、漠然と思っていた。
だが、互いに年をとって、国崎はチーフになり、佐々木も従業員の中では最年長になったからこそ、交わせる会話もあるのかもしれない。
「メールする」と返事をすれば、国崎は佐々木の肩を軽く叩いて「お疲れさん」と微笑むと、先にカウンターの中を抜けて控室に向かった。
その背を追うようにカウンターを出た佐々木だが、自分はトイレのチェックに移動する。
毎週繰り返す金曜のクローズ手順は、身体が覚えている。
着替え終えた国崎がフロアに戻り、眠りかけた青年の首根っこを掴んで、送迎のためにエレベータに連行するのを見送れば、やっと一日が終わったのを感じながら、佐々木も控室へと足を進めた。
欠伸混じりにフロアにやってきた青年は、手近な丸テーブルに腰を降ろすと、鞄を枕代わりにして両手で抱え込み、突っ伏して目を閉じる。
「あぁ、悪い」
その様子に笑いを収めた国崎は、シンクの下に吊るしてある管理表を取ると、佐々木に明日の仕事の引き継ぎを行い始めた。
明日は国崎がシフト休みのため、店は佐々木が取り仕切る。
小声で幾つかの指示を出してから、互いに業務の気になる点を確認し終えると、ふと国崎は佐々木の耳元に唇を寄せてきた。
「シンさん、今度久しぶりに飲もうよ」
佐々木が『Dance』に来て間もない頃は、年が近いこともあって、国崎とは良く酒を飲んだ。
店や仕事の話ばかりで、色めいたことは無かったが、どんなBARにしていきたいか、どんなバーテンダーとして働いていきたいか、何の酒が好きか、そんな話を取り留めもなく紡いでは酒の肴にしていた。
そういえば、最近、すっかり、そんな付き合いはしていない。
長く共に働くことで、ある程度の信頼は築けているし、互いの立場も変化したせいか、そんな時間は作れないと、漠然と思っていた。
だが、互いに年をとって、国崎はチーフになり、佐々木も従業員の中では最年長になったからこそ、交わせる会話もあるのかもしれない。
「メールする」と返事をすれば、国崎は佐々木の肩を軽く叩いて「お疲れさん」と微笑むと、先にカウンターの中を抜けて控室に向かった。
その背を追うようにカウンターを出た佐々木だが、自分はトイレのチェックに移動する。
毎週繰り返す金曜のクローズ手順は、身体が覚えている。
着替え終えた国崎がフロアに戻り、眠りかけた青年の首根っこを掴んで、送迎のためにエレベータに連行するのを見送れば、やっと一日が終わったのを感じながら、佐々木も控室へと足を進めた。