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あい、見えます。
第3章 見つけ出して
『沈黙の音』。
不思議な題名だったが、その粗筋を読むうちに、薫の胸は切なく揺れ始めた。
内容を要約するならば、“高名なヴァイオリニストが事故で視力を失いながら、病院で出会った少年と共に音楽の力を信じて、新たな人生を切り開いていく自叙伝”だ。

(……)

ふと何かに思い当たった薫は、パソコンに視線を戻すと、佐々木の貸出履歴を確認した。
『沈黙の音』、『瞳に映る影』、『私が光を失ってから』、そして―――。

(『奇跡の人』……)

あまりにも有名な作品名に、薫は思わず立ち上がった。
彼は、”視界”に関わる本を読んでいる。
そればかりを、借りている。


配架用に積んでいた本を幾つか持つと、佐々木を追いかけるように一般書架スペースへ足を進める。
無人の書棚の中に、彼の姿を見つけると、薫は持っていた本を中央の丸テーブルに置いて、彼に話しかけようとした。
だが、次の瞬間、目を丸くした彼は、薫に目もくれずにガラス扉に手をかけると、吹き抜けに足を踏み出した。

釣られて男の視線の先を確認する―――。

(やば!)

ハルカの様子に気付いて、思わず、吹き抜けに出ると、焦って佐々木の腕を掴んだ。
大きな丸い円柱の影で、佐々木と薫の姿は彼女から見えないはずだ。
そう考えてから、彼女の目が見えないことを思い出し、薫は苦笑する。

だが、佐々木は突然の出来事に驚いて、薫の顔を凝視していた。

「あ…」

はっとして手を離すと、「ごめんなさい」と頭を下げた。

「あの……」

どう話をすればいいだろう。
戸惑う薫をよそに、佐々木はハルカの姿を心配そうに確認している。
その姿に、彼女は確信した。

彼は、きっと悪い人じゃない。
その直感に、間違いは無い。

「ハルカのこと、話します」

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