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あい、見えます。
第3章 見つけ出して
大学に進んだ薫と違い、遥は専門学校に進み、ブラインドタッチを習得する道を選んだ。点字用のパソコンもあったのに、敢えて普通のキーボードで練習したのは、遥の意地なんだろうと、薫は苦笑して語った。
「さっき、遥が泣いてたのは、多分、音声データに感化されてだと思います」
「……あぁ」
腑に落ちた、という呟きを漏らした佐々木が、再びハルカに視線を向ける。
イヤホンを外し、目を閉じて、休憩しているのだろう彼女の瞳には、今は涙は無い。
先ほど、泣きながら目頭を抑えている彼女を見た時には、動転して身体が先に動いていたが、理由が分かると、自分を止めてくれた薫に感謝の思いが生まれてくる。
薫は、佐々木が遥の仕事を邪魔してしまわないよう、急いで引き止めてくれたのだ。
「彼女は、これまでも泣いていたことが?」
「あります。初めて泣いてた時は、ストーカー被害についての講談を、起こしていた時でした」
「……」
「私も、慌てちゃって。思わず声をかけたら、声をかけられたことに吃驚してたんです、彼女…。集中してたから、泣いてることに気づいてなかったって」
無言で続きを促す佐々木に、薫は一つ緊張しかけた空気をほぐすように息を吐く。
「その時、彼女が言ったんです。“恋愛なんて、いいこと無いね”って」
「さっき、遥が泣いてたのは、多分、音声データに感化されてだと思います」
「……あぁ」
腑に落ちた、という呟きを漏らした佐々木が、再びハルカに視線を向ける。
イヤホンを外し、目を閉じて、休憩しているのだろう彼女の瞳には、今は涙は無い。
先ほど、泣きながら目頭を抑えている彼女を見た時には、動転して身体が先に動いていたが、理由が分かると、自分を止めてくれた薫に感謝の思いが生まれてくる。
薫は、佐々木が遥の仕事を邪魔してしまわないよう、急いで引き止めてくれたのだ。
「彼女は、これまでも泣いていたことが?」
「あります。初めて泣いてた時は、ストーカー被害についての講談を、起こしていた時でした」
「……」
「私も、慌てちゃって。思わず声をかけたら、声をかけられたことに吃驚してたんです、彼女…。集中してたから、泣いてることに気づいてなかったって」
無言で続きを促す佐々木に、薫は一つ緊張しかけた空気をほぐすように息を吐く。
「その時、彼女が言ったんです。“恋愛なんて、いいこと無いね”って」