この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
あい、見えます。
第3章 見つけ出して
笑いを収めた国崎は、店内のJAZZを耳にして、ふと瞳を瞬かせた。
そのまま、穏やかな笑みを浮かべて佐々木に顔を向ける。
肘から顔を離し、上体を起こしながら微笑む国崎に、佐々木が眉を軽く持ち上げる中、国崎はグラスを持った手で天井の辺りを指差した。
「この曲に従えば、いいんじゃない? 晋さん」
「曲?」
仕事柄、自分もJAZZは良く聞くが、それほど博識では無い。
言葉を止めて、目を伏せると、佐々木は店内に流れる緩やかなJAZZのリズムと女性ボーカルの歌声に耳を澄ませた。
これは―――。
「あぁ、そうか…」
「そ」
流れている音楽は、『WAVE』。
波を意味する、その題名には、"波長"や"高まり"、"合図"などの意味もあったはずだ。
穏やかで柔らかいメロディラインは、不思議と身体に染み込み、馴染んでくる。
まさに"波長"が美しい曲だ。
そして、この曲は歌詞も良かったことを、佐々木も朧気ながら覚えていた。
「帰ったら歌詞カードを確認しておく」
「ですね。仕事にも使える知識ですから」
適当だ、と言っていた舌の根も乾かぬうちに、チーフらしさを見せてくる国崎に笑えば、彼のグラスも空になる。
新たな1杯を頼む国崎に、佐々木は、ふと興味本位で口を開いた。
「そういえば、お前こそ、店の客に手をだすようには見えないと思うけど」
「んー」
「出したのか? 店の客に、手」
数秒の間があった。
まさか、と思う佐々木に対し、国崎は、再びカウンターに肘をつくと、だらけた格好になりながら肩を軽く揺らして含み笑いをしている。
「晋さん、真面目だなー」
「おいおい」
「質問に答えるなら、”ノー”だな。……安心しました?」
その答え方に、妙な引っ掛かりを感じるが、簡単に口を開くような男でも無いだろう。
どう攻めてやろうか、などと考えていれば、国崎のコースターに新しいグラスが置かれた。
先程よりも度数の高いそれを、ためらいなく口に運ぶ様子を見ていたら、悩むのも馬鹿らしくなった。
「じゃあ、お前こそ、どうなんだ。恋愛は」
「俺?」
率直に踏み込んだ佐々木に、国崎は少し考えてから、再び天井を指差した。
「こっちの曲が、俺の恋愛って感じかな」
国崎は戯れめいて笑ったが、残念ながら、次に流れていた、その曲は、佐々木の聞いたことが無い旋律だった。
そのまま、穏やかな笑みを浮かべて佐々木に顔を向ける。
肘から顔を離し、上体を起こしながら微笑む国崎に、佐々木が眉を軽く持ち上げる中、国崎はグラスを持った手で天井の辺りを指差した。
「この曲に従えば、いいんじゃない? 晋さん」
「曲?」
仕事柄、自分もJAZZは良く聞くが、それほど博識では無い。
言葉を止めて、目を伏せると、佐々木は店内に流れる緩やかなJAZZのリズムと女性ボーカルの歌声に耳を澄ませた。
これは―――。
「あぁ、そうか…」
「そ」
流れている音楽は、『WAVE』。
波を意味する、その題名には、"波長"や"高まり"、"合図"などの意味もあったはずだ。
穏やかで柔らかいメロディラインは、不思議と身体に染み込み、馴染んでくる。
まさに"波長"が美しい曲だ。
そして、この曲は歌詞も良かったことを、佐々木も朧気ながら覚えていた。
「帰ったら歌詞カードを確認しておく」
「ですね。仕事にも使える知識ですから」
適当だ、と言っていた舌の根も乾かぬうちに、チーフらしさを見せてくる国崎に笑えば、彼のグラスも空になる。
新たな1杯を頼む国崎に、佐々木は、ふと興味本位で口を開いた。
「そういえば、お前こそ、店の客に手をだすようには見えないと思うけど」
「んー」
「出したのか? 店の客に、手」
数秒の間があった。
まさか、と思う佐々木に対し、国崎は、再びカウンターに肘をつくと、だらけた格好になりながら肩を軽く揺らして含み笑いをしている。
「晋さん、真面目だなー」
「おいおい」
「質問に答えるなら、”ノー”だな。……安心しました?」
その答え方に、妙な引っ掛かりを感じるが、簡単に口を開くような男でも無いだろう。
どう攻めてやろうか、などと考えていれば、国崎のコースターに新しいグラスが置かれた。
先程よりも度数の高いそれを、ためらいなく口に運ぶ様子を見ていたら、悩むのも馬鹿らしくなった。
「じゃあ、お前こそ、どうなんだ。恋愛は」
「俺?」
率直に踏み込んだ佐々木に、国崎は少し考えてから、再び天井を指差した。
「こっちの曲が、俺の恋愛って感じかな」
国崎は戯れめいて笑ったが、残念ながら、次に流れていた、その曲は、佐々木の聞いたことが無い旋律だった。