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あい、見えます。
第4章 見落とさないで
* * *
積みっぱなしだった本を抱えて薄暗い図書館内を歩きまわると、漸く身軽になった両手を軽く振りながら、薫は受付に戻ってきた。
既に仕事を終えたらしい矢崎の姿も無く、無人のカウンターは、閉館間際の騒がしさとは打って変わって、静けさだけが漂っている。
エプロンを外して片手に持つと、カウンターの中に入った薫は、パソコンのスイッチが切れていることを確認する。
そのまま、受付裏手の職員ルームに入ろうとして、ふと薄明かりに何かが光った気がして、薫は視線をカウンターの端に向けた。
(ん?)
菓子箱で作った"忘れ物ボックス"に、黒い何かが入っている。
傍に寄って、手にとってみると、黒い手帳のようだ。
光っていたのは、手帳の表面に筆記体の英語で書かれた何かの単語らしい。
(そういえば…)
この手帳は、もしかして、遥が矢崎に渡していたものじゃなかったろうか。
忙しくてチラッとしか見れなかったけど、席札を渡した遥が、いつもと違う動きをしていたから、何かあったのかと、一瞬、視線を飛ばした。
その時に、遥が何か黒いものを矢崎に渡していた気がする。
(気のせいかな)
なんとなく、その手帳をパラパラとめくってみる。
薄明かりの中、何が書いてあるかは見えくかったけれど、手帳の中身を確かめようとしていたわけでは無かった。
きっと利用者の誰かの落し物に違いない。
(今頃、困ってるんだろうなー)
暢気に片手で手帳を遊ばせていたものの、ふと目に入った単語に、薫の視線が吸い寄せられた。
そのまま、指が、ピタリと止まる。
(これって……)
まさかと思いながら、その手帳を持って職員ルームへ急ぐ。