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あい、見えます。
第4章 見落とさないで
大きな両開きの扉を身体で押し開けながら中に入ると、明るい職員ルームの蛍光灯が、薫の手元を照らしだす。
(うわ…)
見間違いじゃない。
薫が見つめる手帳のページには、確かに『宮本 遥さん』と書いてある。
(これ、佐々木晋の手帳じゃない……!?)
見てはならないものを見てしまった気がして、思わず手帳をパッと閉じた。
直後―――。
「青木さん、お疲れ様」
不意に矢崎に声をかけられて、思わず薫は手帳を持っている手をエプロンで隠す。
やましいことをしているわけじゃないのに、何故か、心臓が一つ小さく跳ね上がった。
奥のロッカーで着替えてきたらしい矢崎は、一度机に鞄を置いてから、壁にかかっている鍵を手にすると、薫に微笑む。
「戸締まり、やっておくから。着替えたら先に帰って大丈夫よ」
「あ、すいません」
「とんでもない。今日は息子がサークルの飲み会とか言うから、急いで帰る必要が無いの。いつも急いで帰ってるから、こんな時くらい、ね」
疲れを感じさせないにこやかな笑顔で鍵を持った手を振ると、館内に戻っていく矢崎を見送って、薫は改めて、一人、手の中の手帳を見つめた。
(これ、どうしよう)
今、落し物ボックスに戻しにいったら、矢崎に鉢合わせだし、かといって、デスクに置いていって良いものかも悩む。
結局、薫は手帳を持ったまま小さなロッカールームに入って着替えを済ませることにした。
(うわ…)
見間違いじゃない。
薫が見つめる手帳のページには、確かに『宮本 遥さん』と書いてある。
(これ、佐々木晋の手帳じゃない……!?)
見てはならないものを見てしまった気がして、思わず手帳をパッと閉じた。
直後―――。
「青木さん、お疲れ様」
不意に矢崎に声をかけられて、思わず薫は手帳を持っている手をエプロンで隠す。
やましいことをしているわけじゃないのに、何故か、心臓が一つ小さく跳ね上がった。
奥のロッカーで着替えてきたらしい矢崎は、一度机に鞄を置いてから、壁にかかっている鍵を手にすると、薫に微笑む。
「戸締まり、やっておくから。着替えたら先に帰って大丈夫よ」
「あ、すいません」
「とんでもない。今日は息子がサークルの飲み会とか言うから、急いで帰る必要が無いの。いつも急いで帰ってるから、こんな時くらい、ね」
疲れを感じさせないにこやかな笑顔で鍵を持った手を振ると、館内に戻っていく矢崎を見送って、薫は改めて、一人、手の中の手帳を見つめた。
(これ、どうしよう)
今、落し物ボックスに戻しにいったら、矢崎に鉢合わせだし、かといって、デスクに置いていって良いものかも悩む。
結局、薫は手帳を持ったまま小さなロッカールームに入って着替えを済ませることにした。