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あい、見えます。
第5章 見えなくても
『遥? 実はね、私、今日、ある人の手帳を落し物箱から見つけたの。
遥が拾った手帳、なんだけど、その手帳の持ち主、私、知ってる人なんだ。
その人とは、私も最近、知り合ったんだけど、とりあえず、その手帳の中身を読むから、最後まで聞いてみて貰えないかな?』
「え…」
思わず、小さな声が漏れた。
(待って…、それって……!)
隣人の落とした手帳の中身を読み上げる、という意味じゃないのか?
「……あ」
慌てて再生キャンセルしようと、キーボードを指先で探る。
流石に、それは出来ない。手帳の落とし主に内緒で、その中身を知ってしまうなんて、ますます返しにくくなるし、場合によっては、個人情報を勝手に入手することになるんじゃないか。
自分だって、初めて会った時から、名前を名乗ることも暗に拒んでいたのに。
(知られたくないことだって、あるかもしれないし。……ごめんね、薫)
ファンクションキーを探り当てて、薫に胸の内で謝罪する。
だが、その僅かな隙に、薫の声が思わぬ言葉を奏でた。
『出逢ったのは、午前3時半』
不安げだが、何かの覚悟を感じる薫の声に、遥の指が止まった。
遥が拾った手帳、なんだけど、その手帳の持ち主、私、知ってる人なんだ。
その人とは、私も最近、知り合ったんだけど、とりあえず、その手帳の中身を読むから、最後まで聞いてみて貰えないかな?』
「え…」
思わず、小さな声が漏れた。
(待って…、それって……!)
隣人の落とした手帳の中身を読み上げる、という意味じゃないのか?
「……あ」
慌てて再生キャンセルしようと、キーボードを指先で探る。
流石に、それは出来ない。手帳の落とし主に内緒で、その中身を知ってしまうなんて、ますます返しにくくなるし、場合によっては、個人情報を勝手に入手することになるんじゃないか。
自分だって、初めて会った時から、名前を名乗ることも暗に拒んでいたのに。
(知られたくないことだって、あるかもしれないし。……ごめんね、薫)
ファンクションキーを探り当てて、薫に胸の内で謝罪する。
だが、その僅かな隙に、薫の声が思わぬ言葉を奏でた。
『出逢ったのは、午前3時半』
不安げだが、何かの覚悟を感じる薫の声に、遥の指が止まった。