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あい、見えます。
第1章 見つめ合って
* * *
不可思議な出会いの翌日、スーパーで買い物をして帰宅しようとした佐々木は、再び、あの美しい女性の姿を見つけて、思わず息を飲んだ。
まるで日に焼けた様子の無い美しい肌と、風に靡いてさらりと揺れる黒髪が、嫌でも目を引いてしまう。
夕暮れの赤い日差しの中で、淡いスカイブルーのワンピースが時折の風にはためいていた。
数メートル先を歩く彼女の後ろ姿は、間違いなく昨日出逢った隣室の住人であることを証明するように、佐々木の前を先導していく。
そして彼女は自分が住んでいるマンションのエントランスを抜けて中に入って行った。
(?)
だが、彼女が横へ曲がった瞬間、佐々木は何か違和感を感じ、思わず目を細めた。
反射的に早足になって自分もエントランスに入ると、彼女を乗せたエレベータが上に向かって上がっていく所だった。
少し考えて、佐々木は隣の外階段を、足早に登り始める。
スーパーのビニール袋が微かな音を立てながら、手元で揺れている。
気にすることなく4階まであがれば、上がりきったところで、手すり越しに廊下の奥が見えた。
彼女がいた。
昨日の夜と同じ場所で、だが、昨日と違っていたのは、彼女は最初から階段の方へ視線を向けていたことだ。
(気づかれていたか……)
佐々木は思わず眉を寄せると、申し訳無さそうに一礼してから、彼女の方へ歩みを進める。
そして、彼女が右手に持ったままのそれを見て、佐々木が感じた違和感は、確信に変わった。