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あい、見えます。
第6章 見すごせなくて
玄関の方を見つめ、耳を澄ますと、足音は自宅の前を通りすぎた。
程なくして聞こえた開錠の音と扉の開閉音に、佐々木は隣人の帰宅を確認すれば、ソファの上の布団一式に視線を戻す。
流石に、すぐ隣を伺うのは不躾すぎるだろう。
まだ断続的に、暗雲を切り裂くような光が走り、強い雨音を縫って雷鳴が轟いている。
微かに、隣室のベランダ側から、ガラス戸を開ける音が聞こえた。
その音が落ち着くのを待ってから、佐々木は一つ息を吐くと、玄関へ向かった。
遥の帰宅した音が聞こえてから、10分弱だろうか。
僅かに躊躇しながらも、佐々木はその女性の部屋のインターホンを人差し指でゆっくりと押した。
緊張した佐々木の心境とは不釣り合いな、高い電子音がゆったりと響き、数秒後、受話器を取るカチャリという音がスピーカーから聞こえた。
「……はい」
不安げな声だった。
けれど、綺麗な声音だと思った。
そのせいで、佐々木は、一瞬、言葉を失いかけた。
慌てて口を開く。
「あの、隣の部屋の、佐々木です」
「あ、…はい」
「急な雨だったので、失礼かと思ったんですが、布団を、お預かりしました。お手すきの時に、取りに」
「ちょっと、待ってください」
遥の声が、少し早口になり、佐々木が口を噤んだ時には、スピーカーからはガチャリと音を立てて受話器を置く音だけが聞こえていた。
程なくして聞こえた開錠の音と扉の開閉音に、佐々木は隣人の帰宅を確認すれば、ソファの上の布団一式に視線を戻す。
流石に、すぐ隣を伺うのは不躾すぎるだろう。
まだ断続的に、暗雲を切り裂くような光が走り、強い雨音を縫って雷鳴が轟いている。
微かに、隣室のベランダ側から、ガラス戸を開ける音が聞こえた。
その音が落ち着くのを待ってから、佐々木は一つ息を吐くと、玄関へ向かった。
遥の帰宅した音が聞こえてから、10分弱だろうか。
僅かに躊躇しながらも、佐々木はその女性の部屋のインターホンを人差し指でゆっくりと押した。
緊張した佐々木の心境とは不釣り合いな、高い電子音がゆったりと響き、数秒後、受話器を取るカチャリという音がスピーカーから聞こえた。
「……はい」
不安げな声だった。
けれど、綺麗な声音だと思った。
そのせいで、佐々木は、一瞬、言葉を失いかけた。
慌てて口を開く。
「あの、隣の部屋の、佐々木です」
「あ、…はい」
「急な雨だったので、失礼かと思ったんですが、布団を、お預かりしました。お手すきの時に、取りに」
「ちょっと、待ってください」
遥の声が、少し早口になり、佐々木が口を噤んだ時には、スピーカーからはガチャリと音を立てて受話器を置く音だけが聞こえていた。