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あい、見えます。
第6章 見すごせなくて
意外な反応に虚を突かれていたら、玄関扉の向こう側でガチャッと鍵を開ける音がする。

そのまま開かれた扉から、サーモンピンクのワンピースを身に纏った遥が現れた。

濡れた髪は粗方拭いてはいるようだが、まだ風呂あがりのように濡れそぼり、上半身の布地が雨で張り付いたせいで、微かに胸元のラインが強調されている。

片手にタオルを持ったまま、扉を半身ほど開き、彼女は佐々木の喉元辺りを見上げていた。

「あの、……布団を?」

「あぁ、はい」

思わず、そのタオルを受け取り、彼女の髪を拭いてやりたくなったが、佐々木は目を閉じて苦笑すると、気を取り直したように視線を向け直して、口を開いた。

「突然の雨で、大変だったと思うので、落ち着いたら取りに来て頂けますか」

「……分かりました」

「洗濯物は、流石に避難させられなかったです。すみません」

「いえ……。あの、ありがとう、ございます」

「いいえ。困った時は、お互い様ですから」

穏やかな口調で告げると、佐々木は遥に一礼する。

「それじゃ、また後で。ほとんど濡れてないですから、安心してください。今日は、ずっと家にいるので、いつでも大丈夫ですから」

「はい。後で、お伺いします」

雨音がうるさい中でも、遥の透き通った声は、きちんと佐々木の耳に届いた。

それは、遥も同じだったらしく、再び一礼して自宅に戻る背中には、そっと閉じられる遥の部屋の扉の音が優しく聞こえていた。

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