この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
あい、見えます。
第7章 見える想い
「なか、み…?」
何の中身なのかは、聞かなくても察しがついた。
佐々木は手の中の手帳を暫く見つめてから、唇を噛み締めている遥に優しく声をかけた。
「少し、話しましょうか」
無言のまま、緩慢な動きで頷く彼女に、佐々木は強く目を閉じてから、彼女を見つめ直した。
緊張を誤魔化すように、口の端を持ち上げる。
「美味しい紅茶を頂いたので、ご馳走させてください」
知らぬ間に、声のトーンが少し高くなっていた。
ほとんど面識の無い相手を自宅に誘うことに、自分自身、戸惑いを感じたが、どこで話せばいいか、正解が見つからず、気付けば言葉が口から滑り出ていた。
言った傍から後悔し、彼女を困らせていないかと不安がよぎる。
だが。
「はい」
遥の答えは、意外にも肯定だった。
浮かない顔のまま頷いた彼女の様子に、佐々木の気持ちは複雑に揺れた。
それでも、この場所に立ち尽くしているのも落ち着かないだろうと、彼は玄関のドアを開けて、彼女を自宅へ、招き入れた。