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あい、見えます。
第7章 見える想い
「それは……」
触れてはならない壊れ物を扱うような、吐息混じりの声で、佐々木が小さく呟いた。
それでも遥は顔を逸らさない。
その態度に、彼は、彼女の頬に手を伸ばしかけて、空中で、その指を握りしめる。
「それは……、私が愛してもいいと言う意味ですか」
低く静かに、噛みしめるように佐々木は尋ねた。
だが、遥は即答しない。
暫くの沈黙の後、彼女は言葉を探すように、細い指で顎の辺りを触った。
「佐々木さんは…、いいんですか」
「……」
「私は目が見えません。人に比べて出来ないこともあるし、臆病で、器用な方でも無いと思います。誰かと仲良くなっても、その人の荷物に―――」
「構いません」
遥の言葉を、静かに遮る。
今度こそ手を伸ばし、頬に張り付いていた髪を、そっと指先で取ってやった。
微かに震えた遥から、すぐに手を遠ざけて、佐々木は淋しげに俯く彼女に微笑んでみせる。
「貴方を一番傍で守りたいと思った。それじゃ、駄目ですか?」
迷いがちに膝下に向けられていた遥の顔が、引き寄せられるように佐々木に向けられた。
まただ、と佐々木は思う。
やっぱり、彼女とは目が合っているのだ。
初めて出逢った、あの時から。
「駄目じゃ、…ないです」
静けさに溶けてしまいそうな声で呟く遥を温かく見つめると、佐々木は、ゆっくりとした動作で彼女の手を取った。
その甲に、そっと唇を押し当てた。